グリコ・森永事件 ②拉致後の金の要求、放火、アベック襲撃
時系列
昭和59年（西暦1984年）
| 日付 | 日時 | 内容 |
|---|---|---|
| 4/2（月） | 犯人から江崎社長宅に新たな脅迫状が届く。 →4/8の取引 | |
| 4/7（土） | 大阪の毎日新聞社とサンケイ新聞社に挑戦状が届く | |
| 4/8（日） | 19時 | →4/2の脅迫状から。 指定した喫茶マミーにはあらわれず。 |
| 4/10（日） | 20：20頃 | グリコ本社試作室西側の市道から、車が急発進したのが目撃 |
| 20：50頃 | グリコ本社試作室が放火される | |
| 放火直後 | 大阪府警の無線通信が妨害される | |
| 21：10頃 | グリコ栄養食品の車庫に止めてあったライトバンが炎上 | |
| 4/15（日） | 江崎グリコ常勤監査役の藤沢和巳さん宛に犯人から脅迫状が届く →4/17-19に新聞３社に広告を出せと指示 | |
| 4/16 | 11時ころ | 曙橋近くで塩酸が入った容器が見つかる |
| 4/17 | ダイエーに挑戦状が届く | |
| 4/18 | ダイエーに送った挑戦状と同様のものが、毎日新聞社、サンケイ新聞社に届く | |
| 4/19 | →4/15脅迫文から 新聞社３社に犯人の指示通りの広告を出す | |
| 4/20 | 17：00～17：22 | 江崎社長宅に3回犯人からの電話がかかる |
| 4/21 | 藤沢監査役宅へ2回目の指示文が届く。差出人は「かい人21面相」 | |
| 4/22（日） | 大阪の毎日新聞社、サンケイ新聞社に2回目の挑戦状が届く。このとき初めて「かい人21面相」の名前が使われた | |
| 4/24（日） | 19時20分 | 指定された豊中市の喫茶店「ダンヒル」にグリコ社の加藤運転手が待機 |
| 19時35分 | グリコ社藤江人事部長宅へ犯人から連絡が入る。 | |
| 20時51分 | 高槻駅に到着するが、電話ボックス内で次の指示書を発見できず。 | |
| 23時 | 捜査体制解除 | |
| 5/10 | 毎日、読売、サンケイ、朝日新聞社に挑戦状が届く | |
| 5/20 | 香料製造会社長岡香料（江崎グリコ取引先）に江崎グリコ宛の脅迫状が届く →5/22、23に車を並べるように指示 | |
| 5/22、23 | →5/20 指示通り車を並べる | |
| 5/24 | 香料製造会社長岡香料（江崎グリコ取引先）に江崎グリコ宛の2通目の脅迫状が届く →5/26に連絡すると指示 | |
| 5/26 | →5/24の指示より 長岡香料研究室に連絡が入ったが、雑音が多く混じり、ほとんど声が聞き取れず指示文は発見されず。 | |
| 5/27 | グリコは大阪府警に裏取引を昨日裏取引をしようとして失敗したことを伝える | |
| 5/29 | 香料製造会社長岡香料（江崎グリコ取引先）に江崎グリコ宛の3通目の脅迫状が届く | |
| 5/31 | 香料製造会社長岡香料（江崎グリコ取引先）に江崎グリコ宛の4通目の脅迫状が届く | |
| 6/2 | 20：15ころ | 車に乗っていたカップル男Aと女Bが犯人に襲われ、男Aは犯人を載せて車を動かす |
| 大同門あたりで男Aは降ろされ、犯人に支持され、男Aは3億円が積まれた車に向かいメモを渡す | ||
| 20：45ころ | 男Aが車に乗り動かした後、しばらくして車がエンストを起こす | |
| 20：48ころ | 男Aは警察に包囲される | |
| 6/24 | グリコは新聞各社に大広告を打つ | |
| 6/26 |
４月2日の脅迫状 → ４月８日取引
４月２日脅迫状
勝久 え これは けいさつえ みせるな
ようもやくそく やぶって にげおったな
にげたり さかろうたり したら
お前も 長女も 殺す いうたやろ
ナカマは みんな はらたてとる
やくそくどおり むすめ 殺せ いうもんも おる
おまえを もう１ど さろうて 塩さんで かお あろうたれ いうもんも おる
うちごと マイトで みな殺ししてれ いうもんも おる
よめはん さろうて おもちゃにして 殺してれ いうもんもおる
鉄ぽうだま うちえ ぶちこんだれ いうもんもおる
おばやしの 聖心や にがわの学こうえ
青さんソーダ ばらまいたれ いうもんも おる
ほかのもんも みんな はらたてとるで
わし ひとりが ナカマが あばれてるのを とめているんや
もう１どだけ チャンスを やる
こんど わしらを うらぎりおったら おまえら６人は
わしらに 殺されるまで いきる だけや
はよ はか つくって おけ
（略）
けいさつの うごきは ぜんぶ しってるんや
いのちと 金と どちらが たいせつや
いのちがおしければ 金を よおい しろ
死にたければ けいさつえ れんらく しろ
こやで ポラロイド ５まい うつしてる
なかには はだかの はづかしいのも あるで
フォーカス やったら ５００万で かうやろ
いっしょに おくったテープも 高う うれるやろ
写しんだい テープだいも いれて おとしまえの 金は
おまえのかぞく 一人 １０００万 ６人で６０００万や
１０００万づつ ぬののふくろに いれて よおいしろ
４月８日 ごご７じに おまえの うちの 64－４XXXXえ TELする
金は 運てん手の加藤に もたせて
甲子えん学えん 東のきっさ店 マミー 64－０XXXで またせとけ
ガソリンまんたんの 白のカローラを マミーのそとえ おいてまて
わしが おまえの うちえ TELしたらおまえが マミーの加藤え
TELするんや
（略）
このこと 相だんして ええのは 女房と母親だけや
大久保も 金子も 藤江も た人や
けいさつえ いえ いうにきまっとる
そしたら おまえら ６人は １年も いきて いられへん
金もろうたら おまえら６人 ゆるしたる
もう２どと なにも せえへん
金だすなら ４月５日か７日の まい日と よみうりと あさひの
求人こうこくえ 下のこうこくを のせろ
金の うけわたしに てちがいがあったら
15日の日ように おなじこと くりかえす
（以下略）
同封されたロート製薬の目薬容器には次のように書かれていた
めぐすりの いれもんえ いれてあるのは 塩さんや 10円だまに かけてみ ようとけるで
西宮郵便局管内から投函
下の広告とは、全国紙三紙の新聞広告に金髪モデル募集を載せろ。とされている。
同封のもの
- 録音テープ。江崎社長が監禁中に吹き込まれたもの。
- ロート製薬の目薬。塩酸が入っていた。
４月８日 取引
18時40分喫茶マミーで張り込んだ兵庫県警捜査一課の捜査員が見守る中、指名された江崎社長専属の運転手、加藤幸雄氏が待機。
しかし犯人の接触はなく、21時に厳戒態勢は解除された。
４月15日脅迫状→４月19日広告→４月21日脅迫状→４月24日取引
4月15日
2通の文書が入っていた。
１通目
大久保（グリコ社会長） 金子（経理担当常務）
ええかんげんに 金を だせ えんさんの ふろ よおいした
（略）
いばらき市の 野野宮の あけぼの橋の 下に すこし えんさんを おいた あしでも つけてみ
（略）
会社も つぶしたる コンチマシン（カカオとミルクを練り上げるチョコレート製造機）をマイトで つぶす 青さんいりの アーモンドチョコレート 20こ よおいした スーパーえ おいてまわったる はよう 新聞こうこく だせ けいさつと 会社に ナカマがいる
けいさつに しらせるな こうこくでたら いびるのやめる わしらは ライフルと ピストル もってる ピストルだけの ポリ公より つよい
２通目
江崎社長にあてた手紙だった。
勝久え
おまえは そんなに 死にたいか 死にたければ 死なせてやる
（略）
けいさつの うごきは なんでも しってる けいさつに ナカマが おるんや 8日は あほどもが あほなこと しておった あほどもの あいて できるか おまえは かんたんには 殺さへん
わしらを なん回もうらぎりおった ゆっくり くるしめて 殺したろうと おもってる
（略）
どうしても 死にたくなければ 金を出せ わしらを うらぎったから 金は ２ばいに する 社長だけの せきにんや ないから 社長は 6000万 会社は6000万
つかいふるしの 1万円さつで よおいしろ 1000万づつ ぬのぶくろに つめて
白のかわかばんに つめて 会社の 金こに よおいしろ おまえの ひみつは まもったる 金もろたら おたがいに えんぎれや
金はらう気 あるなら ４月１７日と １８日と １９日の マイニチ ヨミウリ
アサヒの たずね人 の こう告に 下のこう告を だせ
太郎 すぐかえれ 愛犬タローも まっている 妹より
つぎの れんらくは 手紙で だす でんわは １どしか しない
いたずら でんわに だまされるな
宛先：グリコ社監査役藤沢和己氏
差出人：ゆうかい者
4月19日
グリコ社は、各新聞に約束の広告を出す。
「太郎 すぐかえれ 愛犬タローも まっている 妹より」
4月21日の挑戦状
勝久え よお けっ心 した この うらとりひきは けいさつにも マスコミにも ゆわへんから かならず 金もってこい 運てん手の 加藤にも なにも せえへん 心ぱい するな
（略）
加藤には 白かアイボリイの レインコートを きせて 白かアイボリイの カローラで こい 藤江の うちえ 4月24日火よう日 ごご7じ 30分 TELする
（略）
加藤には 豊中市 上島津のレストラン ダンヒル TEL 863－16XXで 金もって まっとれ 加藤は れんらく すること TELの声は 変やけど なにも いわずに きけ ききとれんかったら そう ゆえ れんらく つかへんかったら 27日 金よう日 ごご7じ30分に 藤江のうちえ TELする
（略）
宛先：豊中市の藤沢監査役宅
差出人：かい人21面相
４月24日
19時20分：指定された豊中市の喫茶店「ダンヒル」にグリコ社の加藤運転手が待機。
19時35分：グリコ社藤江人事部長宅へ犯人から連絡が入る。
「名神高速を85キロで吹田SA走れ
京阪レストランの左側のタバコの自販機の上に手紙がある
手紙の通りしろ」
女性の声で、年齢40歳代と推定されている。
出典：yorunodqn様
20時51分：京阪レストラン吹田売店の自動販売機から次の指示文を発見
「イバラキの インターを でて 国どう１７１号せんを とおって 国鉄タカツキえき南口え いけ
（略）
松坂や の 北の でんわボックスX印に はいれ 車いす用の ボックスの となりの でんわの 下に 手紙 ひっつけとる
（略）」
21時42分：高槻駅に到着するが、電話ボックス内で次の指示書を発見できず。
23時：捜査体制解除
５月20日脅迫状→５月22、23日指示→５月24日脅迫状→５月26日取引→５月27日警察に謝罪
５月20日
脅迫文は２通入っていた
１通目
原田 え
これを グリコの 社長か 常むえ わたせ TELは けいさつが 盗ちょう しとるから
あかん ゆうびんは けいさつが 見おるから あかん おまえが もっていけ わしらの
ゆうとおり せえへんと グリコと おなじめに あう グリコでも つぶせるんや
おまえの とこなんか マイト100本 つこうたら きえてまうで
２通目
グリコの あほども え
おまえら 商ばい人か 商ばい人は そんせえへん けいさつの ゆうこと きいて なんか
ええこと あったか わしらの ゆうこと きいておれば 6000万で すんだんや
あと１年はんで グリコは つぶれる うっらぎりおったら つぶす ゆうたやろ
青さんソーダは なんぼでもある つぎのバレンタインの まえは青さんカリ つこうたる
きょ年は アイスだけで 冷夏だけで 40憶へった 青さんやったら 100億より もっと へるで
200億の よ金も 人けんひで のうなってまう ナカマは やくそくどおり つぶしてまえ ゆうとる
そやけど わしらは ゆるしたっても ええ おもっとる いままで わしも 金つこうとる
罰金はろたら いびるの やめて まえより うれるように CM したる
（略）
罰金２億4000万 CM料6000万 だせ 2000万づつ ひもで くくって 白のバッグ２こに いれて
１億6000万と １億4000万に わけとけ 運てん手には なにもせえへん わしら ぜったいに
つかまらへん けいさつより つよい １人つかまっても しゃべらへん １人つかまったら グリコの人げんも工場もきえてまう
金だす あいづは ５月22日 23日に 本社の中央けんきゅう所の南の 国鉄せんろ から みえる
フェンスの うちがわに 赤の車４だいと 白の車 １だいを 赤赤赤白赤の じゅんばんに ならべておけ
れんらくは おか香料え する
かい人21面相
５月22、23日
グリコ社は独自に22、23日、指示通り車を赤、赤、赤、白、赤と並べる。
５月24日
勝久 え 26日 土よう日 ごご７じ45ふん 道修町の ながおか香料 203‐34XX え TELする
TELしたら ながおか香料です いえ グリコの そおむ課長が うけるんや 手紙 おいてる とこ
おしえたる 赤の車 よおい しとけ 手紙 みつけたら ながおか香料え かえって イバラキ市の
中ほづみの ロッテリア イバラキ店 0726‐26‐02XXえ TELして れんらくするんや 金の ばん人の
のった 白の カローラに 金のせて 駐車場で まて 運てん手が 店の中で TEL うけるんや
（略）
長岡香料の当時の本社所在地は、大阪市東区平野町３丁目。
しかし指示書には長岡香料本社から離れた場所にある研究室の直通番号だった。
長岡香料がグリコの大口取引先であることは、社内でも限られた部署しか把握してなかった。
また指示した長岡香料研究室の直通番号も公表されていない。
５月26日
グリコはこのとき警察に内緒で犯人と裏取引をするつもりだった。
指示通り３億円を用意し、ロッテリア茨木店で待機する。
５月26日19時45分、かい人21面相から長岡香料研究室へ連絡が入る。
指示テープの声を聞き取ろうとするが、雑音が多く混じりほとんど声が聞き取れなかった。
５月27日
グリコの幹部は大阪府署に行き、次のように謝罪した。
「実は警察に内緒で裏取引をしようとしたけれど失敗した。我々では、とても無理だと分かった。以後は、警察のご指示通りなんでも従います」
５月29日脅迫状→５月31日脅迫状→６日２日取引→11月22日脅迫状（6月２日の取引について）→６月24日広告→
５月29日
勝久え
６月２日 土よう に やりなおす
（略）
けいさつが たよりに ならんこと やっと わこうた らしいな
おまえら だけに おしえたろ パンライターは 盗品や けいさつは
あほなこと ばかり しとるのお
かい人21面相
５月31日
勝久 え
まえと おなじに ３億円 よおい しろ ６月２日ごご8時じ30分 摂津市鳥かい中１
のやき肉大同門で 白のブレザーと 白のズボンの45 才いじょうの 社いん ２人 白の
カローラに 金のせて まて ひとりは 店の中で まて ひとりは 車と金の ばん人や
店の中のもんは東食の中村 ゆう なまえに しておく ８じまでに 店に はいれ
れんらくは 長おか香料 道修町の 方え する ８時30分に TELしたら 長おか香料
の江崎です ゆえ 手紙あるとこ おしえたる 江崎も中村も わしらの ゆうこと なんでも
きくんやで ゆうこと きけば なにも せえへん 中村は できるだけ まどのちかくに すわれ
大同門は TEL ０７２６ ５４ ３０●●や
かい人21面相
おたがいに これで おわりに したいもんやな
６月２日
アベックが襲われる
20：15頃
男A：22歳。元自衛官。
女B：18歳
男Aと女Bは車内でラジオをかけながら話していた。車の窓は少し開けていた。
ふとみると少しあけた車の窓から銃身が突き出ていた。
その銃口が迫ってきたので男Aは左手で握ると、犯人は強い力で引き抜こうとした。
その時運転席側のドアの窓ガラスが割られる。
男Aは左手で銃口を握ったままドアを開けると目出し棒を被った人物が３人出てきた。
もみ合いを続けるなか、犯人の１人は足を滑らせ堤防から転げ落ちた。
その直後、男Aは横っ面を棒のようなもので殴られ脳震盪（のうしんとう）をおこした。
大同門へ向かう
男Aは車の運転席に押し込まれると助手席にいた女Bの姿はすでになく、3人目の男と別の車に連れ去った。
２人の男が後部座席に乗り込んで言った。
「彼女がどうなってもええんか。無事返してほしかったら言うとおり運転しろ。
これから一緒に大同門に行く。店の中に入ったら、すぐ左の席に白の上下を着た男がおるから、このメモを見せて、そいつからもらった車でここまで戻ってこい。」
途中男Aがバックミラーで２人の男の様子をうかがっていると、体格のいい方の男が、
「ミラーを見るな」
とすごんだ。
大同門に到着
20：45
北東の淀川新橋方向から白いチェイサーが大同門の真ん中で 停車する。
運転した男が降り、後部座席にいた男（犯人）が運転席に乗り込むと、（犯人らは）鳥飼大橋めがけて走り去る。
男Aは店内に入ると、白いブレザーを着た男に「東食の中村さんですか」と話しかけ、メモを差し出す。
メモにはこう書かれていた
中村 え
上の もんから わしらの ゆうとおり するように
きいてる はずや
（略）
この 手紙 もって きた もんに 車と キーと
金と わたせ
おまえら ２人は 30分 この店で まて
30分したら 会社 え かえれ
あんじょう したる
かい人21面相
４分いない に このもんに 白のカローラ
わたさへん かったら とりひき やめや
男Aは車のカギを受け取ると、駐車場の白のカローラで待機していた人物と入れ替わる形で運転席に乗り込み、3億円を積んだ車に乗ってエンジンをかけ、淀川新橋方面に走らせる。
しばらくしてトランク内に潜んでいた捜査員が車をエンストさせた。
警察が予定していた所より早い場所でエンストでの停止だった。
実はトランク内に潜んでいた捜査員の無線が通じなくないっていた。
２人の捜査員が道の真ん中で停止したカローラに乗り込んだ。
警察「警察や。お前なんや？」
男「俺は違う！ 連れが殺されるんや！」
男性は頭から血を流し顔には殴られた跡があった。
警察「嘘つけ！」
男A「連れが殺されるんや！ 堤防に行かないと。はよ行かせてくれ！」
脇道に入った後、A男は車から引きずり降ろされる。
20時48分、A男は手錠をかけられる。
警察車両に連行される途中、A男は
「あかん、危ないねん。彼女が危ない。早よ行かなあ、あかんのやって！」
と叫ぶ。
捜査員がグリコとの関係を質問してもA男は
「知らん、俺と違うって！ グリコなんか知らんよ」と繰り返す。
警察幹部は、A男の言っていることに信ぴょう性があると判断し、すぐさま彼の運転で犯人が指定した淀川の堤防道路に向かわせることにした。
しかし乗ってきた白のカローラは別の場所に移動した後だったため、予備で用意していたもう一台の白のカローラを持ってきて、A男に
「よし、じゃ、お前ひとりで運転しろ」と運転席に座らせた。
後部座席には外から見えないように捜査員が乗り込み、そのあとに乗用車やタクシーを装った覆面車両が続いた。
大同門から犯人に戻るように言われた堤防までは順調に走れば15分ほどの時間で着く。
犯人は「グリコからもらった車でここまで５分で戻ってこい」と命じていた。
A男が大同門についたのは20時45分。
犯人たちは30分後の21時15分まで堤防道路で待っていた。
A男と警察車両が堤防道路に到着したのは21時15分過ぎだった。
警察らが用意した白のカローラについて
車には３億円の他に
- 収音マイクの設置
- トランクに捜査員が潜んでいた
- トランクを中から開けられるように細工
- 車には細工がされており、トランク内いる捜査員がケーブルのコンセントを抜くとエンジンがかからない仕掛けあった
- 犯人の指定した白のカローラをナンバーも型も全く同じ車を２台用意
マイクには、A男の声を拾っていた。
「早よ行かんと危ない。危ないんや。いや、大丈夫や。あすこへ行かなあかん。早よ行こ・・」
B女の状況
B女は頭から黒い布袋をかぶせられたまま後部座席に寝かされていた。
袋はほのかにかつおの油漬けのにおいがした。
数分走ったところで止まる。
3，40分停車した後車は走りだし、７、8分走った後停車。
そのあと4、５分走る。
21：30 停車。京阪電鉄善光寺駅前。
犯人はB女に、
「友達と22：30に寝屋川市駅前で落ち合え」
といってから、袋を外し、B女に両手で顔を覆わせ、
犯人は
「お金持ってんのか」
と尋ねるとB女は横に振ると、2千円を渡してくれた。そのあと犯人は
「十かぞえる間、どこも見たらあかん」といった。
B女は車から降り3つ数えたところで振り向くと、車は北東の京都方面に走り去った。
車は灰色っぽい４ドアの乗用で、後部ドアがタクシーのように開いた、とされている。
A男の車
A男から奪い、犯人たちに使われていたチェイサーは、靹呂岐（ともろぎ）神社の参道に乗り捨てられていた。
発見されたのは翌３日22時頃。
アベックを襲った犯人
・犯人A
30歳前後。身長168ｃｍくらい。黒い毛糸の帽子と黒っぽい布で覆面。猟銃を持っていた。
・犯人B
25歳前後。やせ型。覆面をし、果物ナイフを持っていた。
・犯人C
20～25歳前後。低い声。
11月22日 新聞社各社に送った挑戦状
（略）
６月２日の ３億円の とき わしら ポリ公と あいさつ しとんねん ポリ公
わしらの あいさつ むししおったから わしらも むし したった けいさつの
車５だいか ６だい はしっとったで タクシーに のった あほも おった
（略）
会社の車に のって １人で くるよう ゆったのに ちがう車で ２人も すわって
まっとった きいとるだけで あほらしいやろ
（略）
昭和59年11月22日付の挑戦状
毎日、読売、サンケイ新聞にあてたもの
６月24日 グリコの広告
グリコは新各社に５～７段の大広告を打つ。
グリコの商品広告はもともとテレビが主体で、犯人らを刺激したくないと理由からテレビCMすら控えていた時期であった。
この広告についてマスコミ各社に
「捜査本部と相談した上で、１か月前からイメージ回復のためのこの企画を準備していた。裏取引など絶対にありえない」
としている。
６月26日 新聞社への挑戦状
わしら もう あきてきた 社長が あたま さげて まわっとる 男が あたま
さげとんのや ゆるしてやっても ええやろ ナカマの うちに ４才の こども いて
まい日 グリコ ほしい ゆうて ないてる わしらも さいきん たべへんけど むかしは
よう くうた もんや こども なかせたら あかん うまい くいもん のうなったら
わしらも こまる 江崎グリコ ゆるしたる スーパーも グリコ うってええ
（略）
けいさつも よぉやった これに こりんと がんばりや
（略）
朝日、読売、毎日、サンケイ新聞社への挑戦状
６月26日着
出来事
４月10日
20時20分ごろ
出火直前の20時20分ごろ、試作室西側にある市道から神戸ナンバーの白いローレルが急発進したのが目撃される。
運転席には年齢30歳ぐらいの男、助手席には年齢40歳くらいの縮れ毛のパーマ頭の男が乗っていたとされる。
20時50分ごろ
大阪市西淀川区歌島のグリコ本社内にある工務課試作室から火の手が上がる。
ガソリンを浸した座布団が投げ込まれ、木造平屋の試作室166㎡が全焼。
20時50分ごろ（出火直後）
4/10（日）にグリコ本社試作室から火が出た直後（20：50ころ）、大阪府警の無線通信に、「ピー」という高出力の妨害電波が入る。
21時10分
大阪市福島区海老江のグリコ栄養食品から火の手が上がる。
グリコ栄養食品本社ビル１階駐車場にあったライトバンにガソリンがまかれた。
21時55分～22時20分頃まで
21：55～22：20ころまで警察無線にささやくような男の声で「まじめにやれ」「アホか」「キャラメルやろか」「グリコやろか」と同じ言葉が繰り返される。
4/27男Mは、朝日新聞社会部に「ある国の人物に警察無線の送受信機を作ってくれと頼まれた。数日後に受け取りに来る。グリコ事件の犯人らしい」と電話を掛ける。
電波妨害した犯人は神戸市長田区の無職31歳の男M。
グリコ本社工務試作室とグリコ栄養食品のおおよその位置